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中年の男は秘書らしき女性と足早に園長室へ入っていった。
そして小百合ちゃんに連れられてやってきた生田の表情はなにやら冴えない様子だ。
むしろ不満顔というべきか。
あんな不満げな表情をした生田は今までになかった。

とても気になる。
俺は耳を澄まさずにはいられなかった。


まるで中学生みたいだ。
そういえばこうやって友達と何かあれば先生の会話を盗み聞きしたもんだな。
今もこんなことやってるって俺はまるで成長していないようだ。
これも野球漬けで生きてきたツケか。



耳を澄ませるとあの男性が激怒しているようだ。




「園長。これは一体どういうことなんですか?」
「いやぁ。どういうことかと言われましてもねえ。私たちもまさに青天の霹靂ってやつで…」
「困りますね。何で私がこの子をここに預けたかもうお忘れですか?」
「いいえ。昨日のことのように覚えてます」
「ほぉ。私にはとてもそうは見えないが。まぁいい。とにかく何故絵梨花がこんなことをしたか原因を突き止めて欲しい」

中年男性は生田を下の名で呼び捨てにした。
ということはこの男は生田の父親なのか。
それにしても普段は高圧的で保護局や矯正局の人間にも容赦なく罵声を浴びせる松子園長がかなり下手に出ている。
この男は一体どんな男なのか。


「絵梨花。何でこんなことをしたのか自分の口で説明しなさい」
男が高圧的に何か説明を求めている。
俺は今にもこの扉を開けて中に入って男に蹴りの一発を浴びせたい衝動を何とか抑えることで必死だった。


「別にやりたいことをやりたいと思ったので応募したまでです」
「全然理由になっていない。何か他に理由があるんだろう。正直に言いなさい」
「今言ったことが正直なことです。私がやりたい。やるにはどうしたらいいか。考えて応募した。それだけです」
「ふざけているのか?大体私はおろか先生方に何の相談もなしにやるとは言語道断だ。私は認めんからな」
「あのぉ。生田さん…」
松子園長が何と間に入って仲裁を図ろうとしている。普段は真っ先に喧嘩腰にいくのに。
俺はまさか園長がこんな柔和な対応をしているのを見ることになるとは夢にも思わなかった。


「君は黙っていたまえ。大体3年前私がいなかったらこの学園はとっくに終わっていた。それを救ったのは誰か忘れたのかね?」
「い、いやぁ…」
「そう私だ。私があちこち根回しして何とか登録取り消しを回避できて今があるんだろ?その時の約束も忘れたか?」
「お父さん!」
「お前は何も口にするな。いいかね私は絵梨花を何とか一人前の大人になるよう教育するようにと言って預けたはずだ。君は出来る。そう言ったよな?」
「は、はぁ…」
「それがどうだね?こんな子供染みたことをしているではないか。私はね。君に失望したよ」

言われっぱなしの園長。さぞ腹の底では怒りに燃えあがっているに違いない。
だが、そんな園長が自制しなければならないものをこの男は握っているようだ。


「今日はこれで失礼するがくれぐれも今後このようなことが起きないよう指導管理を徹底したまえ」
「わ、分かりました。また近況は後日報告させていただきます」
「そうしたまえ。新内君。行くぞ」
「はい。局長」

どうやら話が終わったようだ。
俺は少しその場を離れた。

しばらくして男が秘書らしき女性と出てきた。
その立ち振る舞いはいかにも上級官僚というオーラが漂っているように見えた。
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