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話はここから3年前に遡る。



俺はレギュラーシーズンの大半を二軍で過ごすも夏に結果を出して終盤のところで一軍に昇格した。
主に代打での起用だがヒットを打ち、首脳陣の信頼も得てクライマックスシリーズのメンバーに選ばれた。

既に巨人は優勝を迎え、一度だけでも胴上げに参加できたしビールかけもやった。
あの頃がプロに入って絶頂期だったかもしれない。



しかし、その時にとんでもない地獄が待ち受けていた。
そう。10月23日にあった東京ドームでのクライマックスシリーズファイナルステージの最終戦だ。


「あーっと外れた。フォアボール!守護神岩瀬がまさかの大乱調。残り1アウトが非常に遠い苦しい展開です!」
相手は中日ドラゴンズ。状況は4-3の1点ビハインド。ツーアウトまできたところで長野さん、坂本がヒットで出塁。
そして阿部さんがフォアボールで二死満塁の絶好のチャンスだ。

俺はもしかしたらイケるだろとワクワクしながらベンチに座っていた。
すると俺のところへ原監督が駆け寄ってきた。

もしかして代走?いや、俺足遅いんだけどな。
しかし、監督は思わぬことを口にした。

「すぐバッターズサークルに行け。お前に任せる」
え?
俺が?

でも俺はすぐに悟った。
実はシーズン中に俺は岩瀬投手からタイムリーを打ったことがある。
偶然かと思ったがその後もう一度対戦した際もツーベースを放った。
この相性の良さとチャンスの場面での強さを買われたんだ。

よし。このゲーム俺が決めてやる。

俺は決意を固めてヘルメットを付けてバッターズサークルに向かった。
控えていた由伸さんに「任せたぞ」って言い肩を叩かれて更に気合が入った。

そして原監督が審判に俺の名を告げ、会場に俺の代打がコールされた。
俺は多くの巨人ファンの大歓声を受けてバッターボックスに入る。

「…お願いします」
「お前のスイングは天才的だよな」

谷繁さん。さすがだなぁ。
ボソッと俺を褒めてくるもそこからは「絶対抑えてやるからな」という闘志が伝わる。
俺はゴクッと唾を一飲みして構える。

まずは第一球。少し速いストレートは外れてボール。
続く第二球もストレートでここは見極めるもストライク。
第三球、第四球はいずれもスライダーで外れてこれでスリーボールワンストライクだ。

そして第五球はいい感じのストレート。

いける。


そう思って俺は力強くスイングした。

打った瞬間に打球はサード方面に向けて飛んでいく。
俺は全力疾走するも打球はファウルラインを越えて判定はファウル。
これでスリーボールツーストライクのフルカウントになった。

もう打つしかない。
追い込まれた俺。
しかし、相手も追い込まれている。

もう勝負するしか選択肢はない。

果たしてどちらが勝つのか。
東京ドームはこれ以上ない緊張感に包まれている。

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!
あと一球!あと一球!

スタンドから聞こえる双方のファンの歓声。

よし。

双方が覚悟を決めたようだ。

さぁ岩瀬さん。投げてください。
本気の投球できてくださいね。
俺がそれを打ち返しますから。


そして岩瀬さんがこれまでに見たことのない全力で腕を振った。

きた。

俺は全身の力でバットを振った。
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