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28

「マズイな。少し無茶しすぎたな」
若干のブランクは時に足を引っ張る。
俺の場合はまさに足に過度な負担をかけ過ぎたようだ。

どこか休むところはないか。
さすがに人家すらまともにないところだ。
俺はゆっくりと歩いていると小さな教会を見つけた。

こんなところに教会。
俺は不思議に思うもここで一端休もうと思った。


教会の入口前の階段に座り込んで持参したペットボトルに入ったスポーツ飲料を一気に飲み干す。
そしてタオルで顔周りの汗を拭っていた時だった。


「あの…」

「うわぁ!!!!!」

俺は思わず声をあげてしまった。

まさかここに人がいるとは思いもしなかった。

俺の目の前にいるのは修道着を着た若い女性だった。
どうやらここの修道女のようだ。

俺の心臓の鼓動はかなり高まっている。
そして今度は冷や汗が滴り落ちた。

「驚かせてすいません」
「いや、こちらこそすみません。まさか人がいるなんて思いもしなくて…」
「良かったら入りませんか?」
「いやそんな。教会ですし…」
「構いませんよ。神は分け隔てなく歓迎してくださいますから」
「そ、そうなんですか…」

俺はそう言われると教会の中に入った。
俺の家は仏教なんだけどなあ。

まあいいか。


俺は食堂らしきところに案内された。
実に古い教会だ。
床はギシギシいっているし置いてある家具も年代物だ。


「すいません。こんなものしか用意できませんけど」
「あぁすみません」
俺は修道女が用意してくれた紅茶を飲む。
何だろう。すごく美味しいぞ。
まさかこんな片田舎の外れにある教会でこんなに美味しい紅茶を飲めるとは。

「もしかして乃木坂学園にいらした元野球選手の…」
「ええ。さすが人が少ない街だ。噂は早い」
「いえ。私一応乃木坂学園で月に一度説教をしたり懺悔を聞いたりしてるので」
「なるほど。そういえばそういうのもあるとは聞いてたので。しかしまだお若いですね」
「私は深川麻衣といいます。学園の子たちからはシスターまいまいと呼ばれてますが」
「シスターまいまい?全くあいつらときたら何てことを」
「いえいいんです。実は私もあの学園を出た身なので」
「そうだったんですか」

聞くと深川は幼い頃から児童養護施設に預けられていたそうだ。
しかし成長するにつれて問題行動を起こすようになり痺れを切らした施設側が乃木坂学園に移した。
その後も非行を繰り返すなどしていたがある日転機が訪れた。

それがこの教会を預かる深川神父の存在だ。
彼女は深川神父の説教を受けるうちに改心し、修道女の道に進んだという。
そして、5年前に深川神父の養女として迎え入れられたそうだ。

「これが乃木坂学園にいた頃の私です」
「こ、これがですか?まるで川後みたいだ」
「彼女は特に私の話に熱心に耳を傾け、積極的に交流しています」

川後か。
あいつ普段からおしゃべりばかりして不真面目な奴だと思っていたが。
人は見かけによらないものだ。

「ところで先生は何か懺悔したいことはありませんか?」
「えっ?」

俺は深川の突然の申し出に驚いた。
懺悔したいこと。
そりゃあ山ほどあるさ。
でもどこから何を話せばいいんだかさっぱり分からない。

「いや。さすがに遅いですしまた改めて学園にでもハハ…」
「そうですか。でも何かお話したいことがありそうな気がしまして…」
「いやいや。シスターに話せることなんて全然ないっすよ」

俺は笑って濁すと深川も笑みを返してくれた。
おっと。
明日も早いんだ。さっさと学園に戻ろう。
俺は立ちあがり、玄関を出た。

「今日はご馳走様でした」
「いえ。もしよかったらいつでもいらしてください。神はいつでもお待ち申しておりますので」
「ええ。それじゃ…」

俺は軽く屈伸し、走り始めた時だった。


「3年前の10月23日。東京ドームにおけるクライマックスシリーズファイナルステージ最終戦の9回裏二死満塁」

は?

俺は深川の声を聞き、立ち止まり後ろを振り返った。
すると深川は深くお辞儀をして教会へ戻っていった。

一体何なんだあの修道女。
何故あのことを知っているんだ。


俺は何かモヤモヤした気分でその場を後にした。
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