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26

俺は相談室に場所を移して事情を聴くことにした。
しかしまさか俺が直接聴くことになるとは。
まだ来て一週間も経っていないこんな新米の野球バカを信頼しているのはどういうことか。
もしかして生田が。

俺は不思議な思いを隠し、まずは真実に耳を傾けることに集中しようと頭を切り替える。

「一体何でお前はあのデパートにいたんだ?」
まずは出だしから。
直接「何で飛鳥はお前を庇ったんだ」と聞いても答えにくいだろう。

野球も同じだ。
相手がどんな球を放ってくるのか。
過去の投球パターンに相手捕手の配球の要求パターンを照らし合わせシュミレーションする。
力で押したストレートか。
見せるためにわざとスライダーを投げてくるのか。
それとも覚えたての球種を試しに投げるのか。

何十パターンの投球を瞬時に見極める。
これが一番難しい。

当たればヒット。外れたら凡退か三振。
そう。バッターボックスに立てば相手バッテリーとの静かな駆け引きなのだ。
そう考えれば慎重に丁寧に事情を聞くのがベストだ。

しかし北野はダンマリで下を向いている。
焦って答えを引き出そうとしても逆効果だ。

「いや責めてるわけじゃない。実は俺もよく寮から抜け出して街で遊んだもんだよ」
「へ?」
「ああ。野球部やチームの寮ってここ並みに厳しんだよ。門限があったりどこそこには行くなってね。でも行きたくなるのが人の常だ」
経験に勝るものはない。
こうやって実体験を話すことで自分だけが悪者だという考えを取り払おう。そう思った。

「でもバレなかったんですか?」
さすがは生田。いいアシストだ。

「いやバレたときはこっぴどく叱られたし罰走だったりプロじゃ罰金も取られたよ。まぁ今じゃいい思い出さ」
こうやって寮の脱走話を語るうちに北野も段々笑うようになってきた。

いいぞ。
こうやって少し和んだところでさりげなく聞いてみる。

「それでやはりあの本屋に欲しい本があったのか?」
「ううん。そうじゃないんです…」

北野はこうして重い口を開いた。






なるほど。
そういうことだったのか。

だから飛鳥はこんなことを。

俺は確かな手ごたえをつかんだ感じになった。
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