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14

「じゃあ。先生には体育の指導、監督をお願いします」

橋本に言い渡された次なる責務。
何となく来る時からは分かっていたことだ。

「確かにアスリートでしたけど野球しか分かりませんよ」
「構いません。運動の基礎だけを教えてくれればそれで」

ここは児童養護施設なのに独自で授業をやって指導をしている。
彼女たちは学校に行かないのか。

まぁいいか。今は教えることに集中しよう。




「いいか。まずはきちんとだな…」
ジャージ姿の少女たちはダラダラと準備運動をやっているようだ。
まったくこいつらときたら。怪我してからじゃ遅いんだぞ。

「おいたかがストレッチだと思ってるようだがこれを怠って人生棒に振った奴もいるんだぞ」
俺がそう言っても誰も聞く耳すら持たない。

すると彼女らは近くにあったボールとバットを持ってやってきた。

「おい何だよ」
「私たちに命令するなら特大ホームラン打ってみてよ」

急に何を言い出すかと思ったら。
小百合ちゃんからワケアリとは聞いていたが想像以上だ。
どうやら俺を試しているようだ。

野球をさっぱり忘れて今の仕事に専念したいのにこいつらはそれを利用したいのか。
あるいは打てずにやっぱコイツクビになった奴じゃんと嘲笑いたいのか。
いずれにせよこんなのに乗っかるわけには…。

いや。ここはあえて乗ってみて打ってみるのも悪くない。
このグラウンドの幅は練習場よりも狭い。柵越えも可能だ。
しかもこいつらはご親切に金属バットを持ってきてる。
これはイケるかもしれないぞ。


「分かった。じゃあ俺があの柵を越えたら今後は俺の指導に背くなよ」
「言ったなー。じゃあ私たちが勝ったらさ。東京ドーム連れっててよ」
「ああいいとも。選手にも間近に会わせてやるよ」

ここは大口を叩いた方がいい。
余計に自分の魂が鼓舞するからだ。

「じゃあ誰投げる?」
「川後でいいじゃん」
「任せといてよこう見えてもドッジは強いんだからさ」

川後陽菜がそう言ってマウンドの上に立つ。
俺はバットを持ち、一礼して右バッターボックスに立った。

しかしながらプロでも素人の投げるボールが一番打ちにくい。
大した球速もないからタイミングが取りづらい。

だが打つしかない。
俺は最初に東京ドームのバッターボックスに立った時を思い出した。
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