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「まったくお前たちは毎回毎回ペラペラペラペラやかましいわね」
松子園長がいかにも不満そうに食堂に入ってくる。
どうやら賑やかな食堂の光景が気に入らないらしい。

「園長だっていっつも喋ってんじゃん。ベラベラどうでもいいことをさ」
「永島。お前が偉そうに言うんじゃねぇよ。おい誰だ今日の当番は?」
「確かまあやじゃない?」
「え?私?」
「え?何。お前たちは自分たちで決めたことも憶えてないのか?」

夕食前にこんな賑やかな風景はあまり見覚えがない。
普段は寮で男たちが食べることに必死でロクに会話もせずネタも野球ばかり。
しかもかなり厳しかったし食べ終えたら練習して寝る。
こんなおしゃべりをする余裕すらなかった。

思えば女性だらけに囲まれて食べること自体が初めてだ。
今日は人生の中で一番多くの初体験をしている日だといえよう。


「ていうか私がこうして来たのには理由があるわ。まぁもう分かってるんでしょうけど」
「知ってる。あの人でしょ!?元プロ野球選手の…」
「確か巨人にいたんでしょ?」
「えー!すごーい!」

何となく予想はしていた。
幾らこんな片田舎の女の子でさえやはり巨人ブランドは大きいものなんだと痛感した。

見るからに彼女たちが野球に興味があるとも思えない。
しかし巨人はやはり名門チーム。全国津々浦々回ってもスターのような扱いになる。
今回も初めて会ったばかりの女の子たちから質問攻めにあうのもやはり巨人という名前があるからだ。


「俺たちはユニホームを脱いでもこの名前につきまとわれる」
かつて引退した先輩選手から言われたこの言葉の意味を今理解した。
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